Appleの強権政治に屈服したFlash、Appleを好きになれない理由

おいらは、Appleを好きになれません。Appleが過去に行った数々の行為が、はっきり言ってあまりにもあくどいものばかりだからです。

昨日、Webエンジニアには衝撃的なニュースが流れました。それは、Adobeがモバイル向けFlash Playerの開発を打ち切るというものです。実質的には、Adobeはスマートフォン向けFlash Playerを打ち切り、今後はHTML5に注力する、ということです。

おいらとしては、Adobeにとってこの方向性自体は概ね間違っていないと考えています。しかしながらネット上の情報(特にTwitter)を見ている限り、「HTML5の勝利」だとか「HTML5が正しかった」という発言が多いように見受けられます。この発言については、おいらは賛同しかねます。

そもそもAdobeがFlashを諦めたのは、HTML5に対するFlashの技術的劣位を認めたのではなく、「AppleがFlashを閉め出した」ことによるところが大きいのです。すなわち、「Appleが力ずくでFlashを市場から撤退させた」のであり、「ユーザが自由市場に於いて選択肢を与えられた結果として、HTML5が勝ちFlashが負けた」のではありません(iPhoneのモバイルSafariにFlash Playerを組み込む選択肢を与えられないのはある程度理解できるが、2010年4月に実施されたAppleのライセンス規約改定はAdobeのFlash→iPhoneアプリ自動変換機能を狙い撃ちしたものであり、はっきり言って強権政治以外の何物でもない;その後ライセンス規約は緩和されたものの、Adobeの計画を大幅に狂わせたことに変わりはない)。

AppleによるAdobeへのこういった仕打ちは、「Adobe Premier vs Final Cut」でも行われました。詳細までは覚えていませんが簡単に言うと、Adobeが映像編集ソフトとしてPremierで地位を築いていたところに、突如Appleがとんでもない価格差で後からFinal Cutをぶつけてきた、というものです。Adobeはパッケージソフトウェアメーカーであるのに対し、Appleはハードウェアメーカーなので、そもそも利益構造が違います。そのような状況にあって、Adobeが太刀打ちできるわけがないのです。同じような位置づけのAppleによる行為としては、他にデスクトップウィジェットの「Konfabulator」(※Adobe製品ではありません)に対して「Dashboard」をぶつけた例もあります。前者がシェアウェアとしてのビジネスモデルを構築していたのに対して、後者はMac OS X 10.4以降から標準バンドルされるようになった、というえげつなさです。

一連の流れから見て取れることは、

  • Appleは、自分の価値観にそぐわないものは認めず、市場原理に関係なく閉め出しを行う
  • Appleは、他社が努力して構築したビジネスモデルを、自分たちのビジネスモデルで横取りする

ということです。

Appleは、一時期大変厳しい冬の時代を過ごしました。その時になぜ会社が維持できたのか。それは他でもないAdobeが熱心にMac向けのソフトウェアを市場に提供しつづけ、かつ熱心なAdobeユーザが最も使いやすいプラットフォームとしてMacを選び続けてくれたからです。そのことをすっかり忘れたかの如きAdobeへの仕打ち。これこそが、おいらがAppleを好きになれない最大の理由です。

ちなみにおいらは、上記のような境遇に遭っても素晴らしい製品を作り続けているAdobeが、逆に大好きです。Adobeは自他共に認める「善意の独裁者」であり、Adobe製品はプロプライエタリソフトウェアの筆頭に挙げられる存在ですが、それでもAdobe製品を喜んで使いたいと思っている一人です。がんばれAdobe。

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